JR東日本は、朝通勤時間帯に利用者同士の混雑リスクを減らし、安全でスムーズに通行できるようにする「ラウンドアバウト実証実験」の第2弾を2023年11月15日(水)から新宿駅構内で実施します。
世界でも珍しい実験も初回の結果は…
ラウンドアバウトとはヨーロッパを発祥とする環状交差点のことで、中心とする箇所の周囲を一方向に周回して走行するルールが定められています。信号を必要としないことから災害などの停電時でも円滑な交通を維持できると言われており、近年は日本の道路にも採用例が増えています。
歩行者を対象としたラウンドアバウトの実証実験を駅構内で実施するのは世界的にも珍しい試みです。場所は新宿駅南口の13・14番線階段付近のコンコースで、第1回として7月10日(月)〜12日(水)に実施した場所と同じです。今回も、数理科学を応用した群衆マネジメント学の研究に長けた東京大学大学院の西成活裕教授と連携した産学連携での取り組みです。
前回の実証実験を振り返ると、駅社員の誘導によりラウンドアバウト歩行が実現した際には混雑度や密度の減少傾向が確認できたとしています。しかしながら、実施を知らせるポスターやデジタルサイネージ自体が利用者にあまり認識されず、実施期間が3日間と短かったこともあり、実験終了後にラウンドアバウト歩行は定着しませんでした。
(新宿駅南口ラウンドアバウト実証実験の実施場所構内図、サイネージへの表示内容など詳細は下の図表を参照)
切り札は「混雑度により変わる案内画面」
こうした前回の反省点を踏まえ、手法を一部見直して再チャレンジが行われます。13・14番線ホームからの利用者と、小田急線乗換口からの利用者が交錯しないよう、エレベーターを中心に反時計回りに一方通行を促すのは前回と同様ですが、周知方法にひと工夫が加えられます。
実施箇所の床には矢印シートが貼付され、13・14番線からの利用者、乗換口からの利用者それぞれがエレベーターの右側へと向かうよう誘導が行われます。ラウンドアバウト歩行をより多くの利用者に認識してもらうため、周辺へのポスター掲示に加え、視界に入りやすいエレベーター壁面に前回よりも大型のサイネージが設置されます。
サイネージには通行方向を示す矢印が案内され、乗換口利用者の混雑状況に応じてコンテンツが切り替わります。人の流れが少ないときは矢印がゆっくり回転する「空」表示ですが、混雑時には矢印が高速で回転する「混雑」表示に変わり、ラウンドアバウト歩行の必要性を訴えます。混雑状況把握や効果検証には、エリア付近に設置される「LiDARセンサー」や、カメラの画像解析が活用されます。
さらに、ラウンドアバウト歩行の定着を目指し、実施期間は11月15日(水)〜12月1日(金)の17日間へと大幅に拡大されます。これらの改善が功を奏して人の流れがスムーズに変わる成功事例となるのか、注目したいです。